このインパクトはどこからくるか

養老孟司『かけがえのないもの』 「生老病死をなぜ嫌う」より

四人目の子どもを産んだという保険婦さんに大阪で会ったことがあります。
この人は、珍しく家で産んだそうです。家で産むには産婆さんを頼まなければいけない。
二万人以上取り上げたという八十いくつの産婆さんだったそうです。
そのお婆さんが、お産が済んだ後で、胎盤を押しいただいている。
何をしているかと思ったら、においをかいでいた。
「奥さん、この胎盤、いいにおいですよ、食べられますよ」と言うので、
その保険婦さんは食べたそうです。産婆さんによると、近ごろの胎盤
においが悪くて食べられないのが多いそうです。


今日読んで戦慄した文章。いまだに衝撃が醒めやらぬ。
動物が生まれたばかりの子を舐め回してきれいにし
胎盤もついでに食べてしまうのはよくあることらしい。
であるならば、人間も動物なのだから、と言うが・・・・・・。
人間はそういうことをしないはずという暗黙の了解があって
それをいきなり覆されるように見えるから、と胸を衝くのか。
でも、異常そうに見えつつも、実は大したことではない、
のだけれど、それでもappealingだというのは不思議だ。