見えていることと隠れていること

下りのエスカレータというのは、おかしいんじゃないか?
と突然、しんいち君が指摘した。エスカレートしてないじゃん。
たしかに、言われてみれば語義矛盾のような気もする。


しかし、もうすこし考えてみて、次のことを思いついた。
ふだん見えてはいないけれど、隠れているところで、
エスカレータも上に昇ってきているのではないかと。


当たり前なのだけれど、エスカレータの内部の仕組みは、
段ひとつ分のステップがたくさん連なって輪っかになり、
それがくるくるキャタピラのように回っているイメージ。


下りのエスカレータが、ぼくらの気付かないところで、
静かにエスカレートし続けているところを想像してみる。
いつだって何も考えずに下っているつもりのときでも、
仮想的なエスカレータに乗って、ぼくらは上昇している。