勝手に遊びに行って何が悪い

学会に一人で行くことになり、戸惑いながらいろいろ調べてる。
これまでは誰かと共に同じ飛行機で同じホテルで移動も一緒、
絶対に迷子にならないよう気をつけてた。他力本願にすぎてた。


今度のベルリンも最初は先輩と一緒の予定だったけど、
別の学会に行くから一緒には行けないことになった。
それまでは。学会が終わったら東欧を豪遊しようぜ、
プラハやウィーン、ザルツブルクなんかも行きたい、
ミュンヘンは?プタペストは?ブラチスラバってどこ?
それはさすがに欲張りすぎだろ、と果てしがなく
どこまでも空想がふくらみ盛り上がったりしてた。


航空券を調べるのを任せっきりにしすぎてしまったり、
おんぶにだっこで頼りすぎで負担もかけてしまってた。
いつまでもこんなことを続けられないとは感じてた。


それで、学会の期間中だけ滞在して終わったらすぐに
あっさり帰国すれば、余計な心配をする必要もない。
遊びに行くわけではなく、学会に参加するだけだから
周遊はあくまでオプションであるべきだと思おうとた。


でも、せっかくヨーロッパまで行く機会を得たのに、
そんなにそうそうめったにやって来ないチャンスなのに
律儀に学会だけに出て、はい、おしまいもないだろう。
もったいない、と考えるのはけちくさいことだろうか。


それとともに思い出されるのは、学会の旅費を少しでも
経費で申請できないかと調べて確認したときに言われた言葉。
「学会以外は余計なところには一切寄っちゃだめ。
用務のある日のみで、余分な前泊も後泊も許されません。」
どうしてこんな理不尽なことを強要されなきゃならないの。
海外に遊学して見聞を広げるのは用務にならないのか。
いったい何を根拠に余計かどうかを判断できるというのか。
学会は重要だけど、その前後にいろんな都市を巡ることも
それ以上に重要だし、勉強になるし、大切なはずなのに。
だいたい、許されない、という表現が高圧的ですごく嫌。


あなたに許されるくらいならよっぽど死んだ方がましだ。


と叫びたくなるぐらいだけど、ぐっとこらえる。
お役所仕事は杓子定規でそれはそれでエライんだろう。
例外を認めない厳格さをもっと別の方面に活かせない?


これならバイトなりをして費用は自分で出すことにして、
自由に行動した方がどれだけ自分のためになるか知れない。
むしろ、許されないために、どこか余計な場所に行きたい。
ドイツやオーストリアも魅力的だし、前々からフランス、
特にパリには一度行ってみたいとは思い続けていた。
でもなぜか、今回は出し抜けにイギリスに行きたくなった。
行ったことがない国の中では一番行きたくなってきた。
お金さえ貯めればいつでも行けると思ってるだけと、
実際に行くことの間には途轍もなく大きな開きがあり、
思いついて勢いに乗って行かないといつまでも行けない。


いろいろ問い合わせているけどなかなか空きが無く、
航空券が取れるかまだ分からないけれど、行きたい。
ドイツの人たちも英語は上手なんだろうけど、
イギリスの人たちはもっと英語が上手だろう。
ああ、もう周りがみんなばりばりの英語だよ。
英語ができなきゃ、そもそもお話にならない。
いつまで英語から逃げてるつもりなんだよ、
もう逃げ場はないぞと改心するかもしれない。


6月のロンドンはとてもいい季節らしい。

********* 時間が経った ******************


こんなに気炎を上げた日記を書いて半日後。
大学長から海外渡航禁止のご通達が下る。
豚インフルエンザ恐るべし。


もー、もー、せっかくやる気になってたのに。
(あ、それは牛。笑)


しかし、ここでやる気をそがれている暇はない。


出鼻をくじかれてこその反発力を侮るなかれ。


せっかく行けると思ったのに、悔しい。
払い込んだ学会費や参加費なんかのことではない。
高い勉強代がかかったのはよい。世界が大変な状況にある。


でも。もっといい研究をきちんとしなさい、ばかたれが、
っていうお導きなのかもしれないと猛省した。