SSBしかないじゃん

物理の先輩が言ってた。友達が何人か集まって話すことと言ったら
自発的対称性の破れ(spontaneous symmetry breaking)に決まってる。
みんなSSBのことになったら熱くなって語り出さずにはおれないんだって。


今日は牛丼にするかカレーにするか、それともラーメンにするかと決めるのは、
決定論的に考えて行ってどんどん突き詰めれば、SSBに行き着くしかないと思う。
だけど、そのSSBを脳という大がかりな装置でもったいぶって検出するから
どこかで自由意志とか呼ばれるものにすり替わったりもして、面白いけれど、
つまり、自発的に、具体的にどの方向に対称性が破れるのかというのが
その理論の枠組みだけでは計算できない、もしくは、破れることは分かるけど
破れてどっちに向かうかまでは決定できないということと関係するんだろう。
でもそれは理論の不備なのか、計算可能性の問題なのか、原理的な問題なのか。


たとえば、決定論的であるからと言って、現実的にある時間内に広い意味での
計算(シミュレーションでも、物理的な実験でも、数学的な解析的解法でもいいけど)
ができるかどうかは分からないし、そういう場合に決定論的であると言う意味って
いったいあるんだろうか。そういうのは、原理的決定論的かつ現実的未決定、
とでも言うようなあいまいな状態だったりするんだろう。実際的にはそんな気がする。
そういうのをひっくるめて、両立論(compatibilism)と言っているのかなあ。
というのが、全くもって不勉強ながら、なんとなく思った次第。かなりいい加減。


最近、というかだいぶ前から気になっているのは、カリー・ハワードの対応
(Curry–Howard correspondence)
というやつで、論理と計算がきちんと厳密に対応付けできるという仮説(提案?、主張?)。
それで、ChurchとKleeneが提案したラムダ計算というのがあって、
もともと再帰的関数のクラスを書き尽くして調べるために提案されたらしいけれど、
結局チューリング機械と一致することが分かって(チューリング完全性)一時は廃れた。
でも、関数プログラミングとかで重要性が認識されて、圏論とかで使えるらしい。
実はプログラミングにはあまり興味がないけれど、図式的な計算というのに関心があって、
学部の時に調べていたのは、抽象テンソル図式の特殊な場合のバイノール形式というので、
ペンローズがスピンの計算に用いた方法だった。懐かしい卒論はこれ(.pdf)。(関連する日記
僕がやったのはSU(2)(SL(2,C))の表現だったわけだけど、もっと一般に
リー群と例外群の図式的表現を網羅的に調べた本が出たというのを知ってうれしかった。
Predrag Cvitanovićという数学者が
Group Theory: Birdtracks, Lie's, and Exceptional Groupsという本を出していて、
なによりエライのは、分厚い本なのに、お金のない学生にはPDFをタダで読ませてくれる。

For a price of two coffees and one croissant at the Frankfurt Airport Hotel
(or two pints of beer in Svalbard) you can make my long-suffering editor Vicky happy.
But if you are empoverished grad student or a Wall Street quant let go, click on.

http://www.nbi.dk/GroupTheory/


この人は図式表現を"birdtrack"と呼んでいて、なるほどセンスもいい。


計算するときに、ある保存量があったらそれをトポロジカルに表現できれば
数式を幾何学的な図式に変換できるというのはなかなか便利だと思う。
少なくとも便利かどうかは別としても、見ていて楽しい。アートみたいだし。
それで、カリー・ハワードの対応も図式で表現できるらしい。わお。
それをもっと突き進めていくと、もっとすごい対応が出てくるかもしれない。
John C. BaezとMike Stayが、
Physics, Topology, Logic and Computation: A Rosetta Stone
という論文を出し、それぞれの世界を翻訳するロゼッタストーンに、というふれこみ。
これらを全部つなげようというのだからすごい。関連性はあるはずだから。


ともかく、お絵かきしているうちに計算ができちゃった、
というのが好きで、ごりごり計算もいいけど、絵を描きたい。

こういうの、楽しいじゃん。


Neuroscienceだって、もっといい絵を描ければいいのにな。