南米の時間

EELC2010 (the Emergence and Evolution of Linguistic
Communication)が終わった。ひとり1時間半でかなり長かった。
Hauserらが提案した、LFN(Language Faculty in the Narrow sense)と
LFB(Language Faculty in the Broad sense)の間にあるなにか、
a narrow senseとa broad senseのあわいに思いを馳せる人たちが
いっぱいいて、各々がいろんなおもしろいアプローチを取っていた。


進化を考えるときに、retrospectiveな視点だけじゃなくて、
future-orientedな方向に考えたらなにが分かるんだろうか。
共通のthe ancestor of languageとかprotolanguageが
どんなものかは興味深いけれど、反対方向に展望して、
offspring of languageはなにかということが気になった。


春の学校の予習会は、有志により14時から始まって
22時を過ぎた頃にようやっと自分の発表が回ってきた。
あいだに30分くらい夕食休憩があったけれど、
それ以外はずっと論文を読みながら話を聞いて、
分からないところを質問して、ぐったりしてしまう。
だんだん疲れてきたところで当番が来たので、
頭の中がゆるゆるして、ぐるぐる説明しがちになる。
ど忘れしたところは聴衆に語りかけながらその場で
一緒に考えることにして、なんとか乗り切った。


紹介したのは、
Maintaining accuracy at the expense of speed:
stimulus similarity defines odor discrimination time in mice.
Abraham NM, Spors H, Carleton A, Margrie TW, Kuner T, Schaefer AT.
Neuron 44(5): 865-76. (2004)
http://www.gatsby.ucl.ac.uk/~ahrens/tnii/AbrahamSchaefer2004.pdf


マウスの動物行動実験で、匂いの弁別課題を通じて、
嗅覚におけるスピードと精度のトレードオフを示した。
また、匂いの類似度が高いほど、処理時間が長くなる。
このことは、Uchida & Mainen (2003) Nat. Neurosci.
http://www.gatsby.ucl.ac.uk/~ahrens/tnii/UchidaMainen2003.pdf
での匂いの類似性と処理時間は関係ないという報告への
反論という意義があって、細かいところをぷちぷち
つぶしながらつぶさに調べて、説を覆したのだそうだ。
行動実験で何かを主張する、というときにやるべきことと、
とるべき解析方法としても参考になるところが多々あった。


分子や細胞レベルのミクロな話はほぼ初めて接するので
最初はとまどうけれど、何度も同じような話が続くと、
(同じテーマの論文が続けて2、3報、紹介される)
だんだんイメージがわいてきて、すこし慣れてくる。
ニューロンの話とかだと、昔カンデルで勉強した知識が
おぼろげながら思い出されて、単語とかに見覚えがある。
この辺はわかるわかる、と思えるところがあると嬉しい。
わかるところが徐々に増えてもっとつながれば楽しい。


予習会はひとりずつの発表時間に制限がなくって、
みんなたくさん主張したかったり手間取ったりで、
終わったのが23時だった。(会場の閉まるぎりぎり。)
お昼過ぎの14時から始めたのが、はるか遠い昔だ。
時間が足りなかったので、明日また3時間くらいで
論文6本を読むことになった。ひとり30分の駆け足。


3時半くらいまで懇親会でいろいろ話を聞いたり
しゃべったり、研究者の方々と語り合っていた。
予習会の取りまとめや進行役もやってた人が
すごい変な人(褒めてる)で個性的ですごかった。
奥さんが藝大の日本画だったり、来年度からは
先輩のOさんと同じ研究所に就職が決まったとか、
意外なつながりで、全然知らないところじゃなくて
知っているところと関わりがあるのが不思議だった。


明日から、またしばらく外国からのlecturersの
お話にどっぷりつかろう。英語の時間が続く。


南米とかにいるつもりで、ビーチでゆっくり
くつろぎながら参加するくらいの気持ちで
焦らずに楽しめばいい、とその人が言ってた。