山ごもる

父の実家のお掃除とお墓参りに行った。
山奥なのでケータイが通じず、もちろん
ネット環境などないので陸の孤島である。
対岸の田んぼの畦道沿いに桜が咲いてる。


もう誰も住んでないのでかなり大変なことに。
一日目はやっと寝る場所を確保するだけでも、
気付いた頃には夕食が夜中になっていた。
論文をたくさん印刷して持って行ったけれど
そんな余裕も、そもそもの読む暇もなかった。
毎日掃除で疲れて深く眠った。そしてくり返し。
帰る頃にはどこもぴかぴかに磨き上がった。
いつでも住めるというくらいになって嬉しい。


予定を繰り上げて四日で終わりし、最終日は
帰る途中でMiho museumにふらりと立ち寄った。
ここの建物を建築したI.M. Peiという人は
ルーブル美術館のガラスのピラミッドや
ワシントンのナショナルギャラリーの東館を
設計したことで有名な建築家なのだそうだ。
日本家屋風のガラスの建物やそこにいたる
トンネルから森の上を抜けるワイヤーの橋など、
変わった趣向で前衛的であり刺激的だった。


美術館の収蔵品もすばらしくて、どうやって
個人がこんなに集められたんだろうと感嘆する。
エジプトのホルス神像やローマのモザイク、
アッシリアの壁画にガンダーラの仏像や、
ペルシアの絨毯、古代中国の什器や装飾品。
どれもすばらしく、息が止まりそう。
日本のものも茶器などを中心に揃えられ、
中でも曜変天目茶碗の暗い中にさざめく
星空のような色彩を放つ輝きに魅せられた。


若冲の象と鯨の絵は今は展示されておらず、
いつかどこかで見られたらいいのにと思った。
その代わり、エジプトのカバ像を愛でた。


帰りの車中はこんこんと眠った。