お昼カン

バイト2日目の朝、ミーティングのときに、
ここにいる皆さんはベテランさんばかりなので、
分からないことがあったら聞いてください。
と職員さんが新人さんに説明していて、
はっとさせられた。あれっ、僕もベテランに
いちおう入っているということなのかな?


前期までは、一番下っ端で、あからさまに、
使えないと思われてるのがバレバレだったのに。
それで、何かミスがあると、しょっちゅう、
濡れ衣着せられて、僕のせいにされていた。
もう頭に来て、適度に手を抜きつつ、がんばった。


休憩していると、向こうの方で職員さんが
大きな声で悪口を言ってるのが聞こえたりも。
その職員さんも、最後の方になって来ると、
仕事を覚えるのが早い、と褒めててくれたらしい。
と、後になってから他のバイトさんから聞いた。


2か月空いて、今度からは、新人さんが
入って来て、立場も教える側になったりして、
と言っても、もちろん分かる範囲だけだから
大したことが教えられるわけでもないけど。
早く仕事を覚えてもらわないと、できなかった分、
僕らに余計な仕事が回ってくる、と思うと、
飲み込みが早いといいなと願わずにいられない。


ふだんなら、お昼は12時から1時間休憩で、
この間にご飯を食べたりくつろげるはず。
でも全員同時に休むと、システムが止まるので、
誰かがお昼も残って仕事を続けないといけない。
というわけで、お昼カウンターという役割が
ときどき回って来て、お昼に休めなくなる。
略して、お昼カン、という風に呼ぶのだが、
カウンターを略してカンはおかしいと思うが、
お昼カウンと言っているようには聞こえないので、
やはり、お昼カン、の略し方であっているようだ。


今日はそのお昼カンに当たってしまったものの、
一緒にベテランさん2人もお昼カンだったので、
これは楽勝なのではないかと高をくくっていた。
日によって利用者の数は増減するのだけれど、
さらに、時間帯によっても波があって変動し、
ちょうど少ないときだととても楽ができる。
しかし、そのアテは見事にはずれてしまい、
とんでもない数のお客さんが大挙してやって来て、
ほとんど破綻してしまって手が足りなくて、
右往左往、走り回ってなんとか持ちこたえた。


こんなに疲れたのは、久しぶりだからという
理由の他に、昨日も朝一からだったせいもあるが、
それにしても、尋常ならざるお客さんの数だった。
天気がいいから、もっと別の場所に行けばいいのに。
どうして今日に限って、これ程まで、こぞって、
皆が文化的にならなくってもいいものなのに、
と、思わず愚痴をこぼしたくなる一日だった。
そんなに本が読みたいなら、がんがん読みまくって、
皆にどしどし教養をつけてもらわなくっちゃ。
日本の未来は明るい、とかうそぶいておこう。


1時間遅れのお昼休み、お昼を買って来て、
食べようとしたら、さっきまで一緒に戦っていた
ベテランさんの一人に話しかけられた。
ちゃんとサラダを食べてエライわね。
男の子だったら、揚げ物とかそういうのばかり
食べたがるものなのに。


僕と同い年の娘さんがいるようには見えないけれど、
ということは、僕の母と同じくらいの年齢のはずで、
そうか、こういうところに気が付くものなのか。
確かにそのサラダを手に取る前には、揚げ物の入った
お弁当を買おうかどうしようか迷っていたわけで、
たまには健康的なメニューにしようと変えていた。


サラダ3品盛り合わせは、ゴボウのサラダと
マカロニサラダとマッシュドポテトの組み合わせで、
実は全部クリーム系、というか、要するにマヨネーズが
共通していているんじゃないか、という点がひとつと。
もうひとつ、サラダばかりで量が多すぎて、どっちか
と言えば、量は半分にして値段も半分にして欲しいかも、
という懸念があったけれど、食べてみれば適量で、
よく動き回った後だからもあってか、悪くなかった。