大盛りランチ

研究室があるのとは別のキャンパスで
大学の入学式があった。
こちらに来ることはあんまりないので、
みんなでお昼を食べに行こう!


と呼びかけたら、案外大勢集まった。
前日の真夜中、深夜1時過ぎ、というか、
要するにすでに当日になっていたのに。


お前からそんな風に誘ってくるなんて
めずらしいな、と同期の野澤に言われた。
そう言われてみれば確かにそうで、
自分からこんなに積極的に動いたのも
今までなかったパターンだなと思う。
前の日に新入生歓迎会でお酒が入ってて
その勢いで誘ったというのもあった。


それと、一年前に自分たちの入学式の日に、
遅れて来た野澤と一緒に四川で食べて、
何も説明せずに(辛さ)スペシャルを頼ませて
ちょっとひどすぎたことを覚えていた。
だから、今年もまた悪ノリさせたら
おもしろいんじゃないかと期待していた。
(まったく反省の色もない自分。)


すこし葉桜になりつつはあるけれど、
まだ花も残っていてきれいな並木の下で
人が集まるのを待ってからおもむろに移動。
思ったより人数が集まったということと、
お昼時でごったがえして込んでいたので、
四川は断念して、モミの木に行くことに。


ここも以前、お腹が空いているのなら
大盛りというオプションもあるんだよ、
と野澤に言ったら、じゃあそうする。
と気軽に答えてくれたので、まんまと
いっぱいくわせることに成功したお店。
(ああ、重ね重ね、ぼくって悪いやつ。)


今回は自分も初めて大盛りを頼んでみた。
4人ずつのテーブルに分かれていたので、
それぞれのテーブルにちょうど一皿ずつ、
大盛りが乗っていたら楽しいかな。
と、かなり気安い感じで楽観していた。


しかし、実物が目の前に届くと、
かなりのインパクトがあってひるんだ。
こんなに大きいものだったっけ!?
前回は他人事だと思って見ていたけれど、
いざ自分の前にでんと鎮座ましましている
姿をまざまざ見せ付けられると圧巻。


最初の数口は、そうそうこんな味だっけ、
久しぶりに食べるので、懐かしい気分。
そんな暢気でいられたのもつかの間、
次第に、このボリュームはどう考えても
やっぱりあり得ないと思い始める。
でも、頼んでしまった以上、もう後には。
向こうで、持って帰って晩飯にするからと、
端から完食するつもりがない宣言が聞こえ、
ますます、引き下がるわけにも行かず。


周りの普通盛りであるはずの人たちも、
だんだん口数が減ってきて静かになり、
普通からして量がまちがっている
ということが明白になってきた。
とんと今までに味わったことのない、
未曾有の満腹感に耐え、食べ続けると、
なんとかきれいに平らげることができた。


ご飯を食べることがこんなに辛いとは。
同じテーブルの人達も全員完食してた。
食べなきゃ、という雰囲気が伝染したのか。
もうひとつのテーブルの人は、残したり
お持ち帰りしたりで、それはそれで
家でまた味わえるので、楽しいだろう。


たぶんみんな、食べることの大切さに
気付かされたことと思う。って冗談だけど。
大盛りを頼むまでもなく、一度来たら、
ほぼ確実にもうしばらく来る必要ないくらい
深い充足感に浸れることは確実だろう。
早い話が、見たくもなくなるくらいの満足度。
コストパフォーマンスとして、どうして
あんなので店がやって行けてるんだろう。
ちょっと心配までさせてしまう憎い店だ。


お昼の後、しばらく桜の下でお花見気分で
コーヒーやお茶を飲みながらまったりした。
ウッドデッキができてから、きれいになって
憩いやすい空間に変わっていてよかった。
桜が風に舞うと、新緑の若葉が揺れて、
ちょっとまだ肌寒かったけれど、
これからだんだんに暖かくもなって、
春めいて行くのだろう。いい季節が来る。