糸屋の娘は

Simon Baron-Cohenの講演を聴きに行った。
初来日ということで貴重な機会だろう。
その前に、関連領域の研究者2人の話を聞く。


一人目の人の話はどこかで聞いたことがあるな。
と思っていたら、去年の9月にあった談話会で
まさに同じ人の発表を聞いたことがあった。


他の動物と違い、人間の白目の部分が広いのは
コミュニケーション手段として視線情報を採用したから、
という説があるくらいだから、視線だけからでも
いろんなことを読み取れるし、読み取られてもいる。
ウィンクキラーで自分が殺されたのかどうかに
気付けるっていうのはこういう機構なのかと思う。


二人目の人は、N > 1000とかでビックリした。
よくそれだけ集めてデータを取ったなあ。
自閉症スペクトラム指数(AQ)日本語版
を作成された人のようだ。なるほど。


三人目にようやく本日の主役のご登場。
『共感する女脳、システム化する男脳』という
2冊目の邦訳が出ていたのは知っていたけれど、
タイトルだけ見てちょっと敬遠してしまっていた。
話を聞いて、どういう主張をしていたのか
ようやく分かった。


女の赤ちゃんが人の顔をよく見るのに対し、
男の赤ちゃんが乗り物のおもちゃをよく見る。
という結果に、ちょっとびっくりした。
それを、共感かシステム化の萌芽と解釈して
よいものかどうかは別としても。


ホルモンだけで性差が(あるとすればそれを)
すべて説明できるのかどうかはよく分からない。
極端な話、髪の毛の長さを変数に取っても
相関があるかもしれないじゃない、と
言ってる人がいて、半分冗談だとしても
何が原因で何が結果なのか、簡単ではない。


それと、repetitive behaviorは
システム化としてどう説明されるんだろう?
どうしても、システムという言い方だと
何でもありのような気がしてしまって。
共感とシステム化がどうして対立軸に
なるのかもなんだか腑に落ちないし。
本や論文をちゃんと読まないとな〜。


この後、別の講演会にも参加した。
内容はおろか、どんな集まりかも把握せずに、
とりあえずくっついて行ってみた感じ。
結果的には、かなりの当たりくじだった。
こちらは日本語で、基本的なところから
やさしく解説してもらったので助かった。


そうそう、MT+の「+」ってなんだろう?
というものすごい基本的なところが分からず。
調べたら、MT+というのは、野澤説で正しくて、
MT+ = the middle temporal (MT) plus
other adjacent motion-sensitive areas
というような意味らしい。たぶん。


シンプルな視覚刺激でもまだまだ
いろいろ分かっていないというか、
調べられていないことはあるんだな、
というのが正直な感想だった。
調べられていないというよりは、
まだ見つかってない錯視現象とかが
潜在していて、それを新たに見つけたり、
新しいパラダイムを考え付けたなら、
できることはいっぱいあるに違いない。
ポテンシャルの壁を越えられたら・・・。