雨音の効用

openlimit2007-04-17

5年ぶりに地球史資料館を尋ねた。
静かなところだから気持ちが落ち着く。
かまぼこ型の記念館のとなりにあって、
無料でいつでも開放されているのに、
意外と、知る人ぞ知る穴場である。


世界中の岩石・鉱物が蒐集され、
おしげもなく展示されている。
38億年前の世界最古の岩とか、
酸素を生んだストロマトライトの化石とか、
縞々のアミツォーク片麻岩とか、渚の化石・・・。
鉱物もたくさんあって、
なんとなく心惹かれたのは十字石。
どうして、クロスしてできるんだろう。


紫水晶のでき方のスライドを読んだ。
玄武岩が溶けてマグマになって流れると、
次第に周りが冷えて固まってきても、
中心の高温のマグマだけが流れ去って、
チューブ状の構造が出来上がる。
その中を、シリカに富んだ熱水が通ると、
結晶が成長して紫水晶ができる。


前に来たときは受付に、親切にいろいろ
説明してくれるおばあさんがいたけれど、
さすがにもう人が変わってしまったようだ。
進学したらうちの学科に是非来て研究してね、
というような誘いに応えられなかったので、
ちょっとだけバツが悪かったのかもしれない。
あれ以来ずっと入ったことがなかった。


今は研究者の人が、かたかたパソコンを
打ちながら、静かに受付を守っていた。
こちらが質問をすれば、答えてくれた
のだろうけれど、特に聞いてみたいことも
すぐに思いつかなかったということと、
わざわざ仕事を邪魔するのも気がひけて、
まずはじっくり自分の目で岩や鉱物を
1時間以上かけてゆっくり見て回った。


カンブリア紀のエディアカラ動物群の
化石のレプリカを見ていたら、
端っこにオパビニアらしき化石があって
ノズルの手(口?)を伸ばしていた。
そのおとなりでは、ハルキゲニアが
とげをゆうゆうと四方八方にめぐらせて。
彼らはなぜか滅んでしまったけれど、
生きた痕跡を岩に刻みつけたことで
5億年以上経てもその姿をとどめる。


ここに来ると、時間がまどろんで、
石の呼吸に耳をかたむけたくなる。
でもまだ、ゆっくり見ることができない。
心が波立つのをじっくり感じたい。
喧騒から離れた、もの静かな空間に、
雨だれの音だけがうちひびく。
次も雨の日に来ようか、晴れにするか、
楽しくなやましい難問ができた。