ささいなこと

この春に、駅からキャンパスへ向かう坂道に
迂回路、というか、新しい道の方が直線的なので、
どちらかというと、ショートカットなのかもしれない、
ができて、アプローチの仕方が(ほんの一部分だけ)
2通りできることになった。


もともとあった方は、ごつごつした岩が
敷き詰められていて、曲がりくねっている。
新しい道は、白いコンクリが滑らかに塗られ、
均等な高さの段が整然と並んでいる。


どうして同じところに2本も道を作る必要が
あったのかよく分からないのだけれど、
――ユニバーサルデザインというやつかも――
一つあるとすれば、石畳の道の方は歩きにくく、
特に雨の日などは、なおさらだった。


それで、ここを通るときに、いつも
どちらを通ろうか一瞬考えることがあって、
そのことをわざわざ意思決定問題だ、
などと大げさに言うのもばかばかしいし、
まして、岩の道を歩くときの方が
運動が大きくて複雑だから、登っている、
という実感が強くて、主体性を感じる、
などと分析するのもやりすぎである。


どちらかと言うと岩の道の方が好きで、
去年から歩いていて慣れているせいか、
そう言うとじゃあ親近性の問題なのか、
とかまたそっちの話に持って行かれそうだが、
ともかく、それでも毎回必ず同じ方を通る
というわけではなく、日によって変わる。
やっぱり、その日の気分とか感じ方で
急いでるとか、のんびりしているとか、
考え事をしているとか状況によりけり。


これから、あと何十回、何百回、
そこを上り下りするのか知らないけれど、
まさか毎回こんなしち面倒なことは
よもや考えもしないのだろうけれど、
たとえ無意識にでもどちらかを選んで
通り過ぎ、そんなこと忘れて行くんだろう。


今日は、あまつさえ雨で足場が悪いのに、
それでも岩の道を選んで足腰に何かを訴える。