古生物学

数日前に岩石をじっくり眺めてからずっと、
その効果がゆるゆる続いている気がする。


バージェス頁岩 化石図譜
本屋さんで何か目新しい本でもないか
棚をざざーっとタイトルを目で追っていたら、
バージェス頁岩の本が目に入った。


Stephen Jay GouldやSimon Conway Morris
の本などはちょっと読んだことがあって、

 そういえば、古生物学者というのに
 なぜか強烈に魅力を感じていた時期があった。
 ずっと小さいときは、恐竜に憧れていて、ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)
 それがいったん冷めて、大きくなってから
 今度はワンダフル・ライフの世界を知って
 その奇妙さがえらく気に入っていた。
 そういえば、中学だか高校の学園祭では、
 珍奇な形の古生物について模造紙に書いて
 発表までしたのを、今の今まで忘れていた。

 
でもそれらとはまた違う本だったので
手にとってみた。


ぱらぱらめくって、その本の訳者あとがきに、
エディアカラ動物群についてのきれいな図版が
Paleontological Research, 第7巻、1号、
に載ってるので、ぜひ本書の次に読むべき、
と強く推してあるのが目に留まる。


どんな雑誌だろうと思って、家に帰ってから
調べたら、なんと、日本の学会誌だった。
しかも、無料公開されてるということなので
ちょっとうれしくなってさっそくひもとく。
たしかに、いっぱい図版があって楽しい。


それを見ていて、ちょっと違和感があって、
どうしてだろうともうすこし調べて、
自分が勘違いしていたことをやっと認識。
エディアカラ動物群は先カンブリア紀で、
カンブリア紀の前、より古い時代だった。
カンブリア紀で有名なのはバージェス動物群で、
こちらの方が、形が奇天烈になっている。


そっか、だから、先日の日記で書いたみたいに、
エディアカラ頁岩の中にオパビニアとか
ハルキゲニアが出てくるはずは絶対なくって、
もちろんそのご先祖様はいたかもしれないけど、
あんな形はまだこの時代には出ていなかった。
勝手に見立てていただけで恥ずかしかった。


化石からその生物が生きていたときの
姿かたちを読み解き、再現するという操作を、
ぜんぜん、理解していなかったんだなあ。


専門家の手による精密な再現図を見てから、
もとの化石の写真を見て、びっくりした。
素人目には、化石からまさかそんな豊かな
情報を読み取れるとは、想像を絶する。
正直なところ、岩の中の黒い染み程度で、
運がよければ外形の輪郭が読み取れるかな、
くらいだったりもして、そうなると、
そもそも、その部分が化石だということに
よく気付いたな〜、掘ってた人えらい、
と感心してしまうくらいしかできない。
(図が白黒だからっていうのもあるけど。)


でも、古生物学者だって最初は間違えたり、
エビみたいののしっぽだろうと思ってたら、
実はアノマロカリスの触手だった、とか、
ハルキゲニアはどこが頭でどこが尾か、
というか、どっちが上でどっちが下かも
よくわからなかった・・・、とか、
おもしろいエピソードがいっぱいある。


小学生か、入る前だったかもしれない、
家の近くで化石みたいな石を見つけて、
喜び勇んで家に持ち帰ったことがある。
今から思えば、ちょっと風変わりな形の
溝がついているだけの石だったのかも
しれないけれど、そのときはまじめに、
ここに何かの生物の痕跡が宿ってるんだ、
と夢想して、ぞんざいに大事にしていた。


結構大きな石だったので、ベランダに
放置していた、と言う意味でぞんざいに、
でも、気持ちの上では、ときどき見ると
夢がどこまでも膨らんだので大事に。


その石は、もちろんもうないけれど、
でも、なくなってしまった代わりに、
もしかしたら本当に化石だったのかも、
という可能性はずっと生き続けている。
そしてそこに、いまだ誰にも知られぬ
太古の生きものの記憶が刻まれている。