その名はシャガ

桜の終わった土手を歩いていたら白い花が咲き誇っていた。
その名をシャガと言うらしく、アヤメのなかまのようだ。
新緑の絨毯の上にくっきりした白が浮かび上がっている。


アヤメのなかま、アヤメ科アヤメ属は数が多く、
いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)
という表現もあるように、アヤメとカキツバタ
それにショウブとの区別はかなりむつかしい。
ショウブもアヤメも漢字では同じ菖蒲になるなど、
混乱の理由がたくさんあって、ああ悩ましい。
さらに、菖蒲湯に入れる菖蒲はサトイモ科の植物で、
花の咲くノハナショウブ(こちらはアヤメ科)とは
葉の形が似ているだけで、これまた別物である。


これらの見分け方はいろいろあるようだけれど、
植物分類学者を目指すつもりがないのであれば、
とりあえず彩りゆたかな花を愛でればいい。
ちがいを見つけたらそれぞれに名付けたくなる
人の気持ちはよく分かるけれど、だからと言って
たとえ名を知らなくても花の美しさは変わらない。


それでも、次に咲いているのを見かけたときには、
ああ、あれはシャガと言うんだったと思い出そう。
名を呼べるうれしさは、どこから来るんだろう。
知っているということは、親しみの証だから。
春の土手を歩こう。そしてまた君の名を呼ぶ。