阿佐ヶ谷とバラン万丈

半袖だとうす寒いし、ジャケットを着るとちょっと暑い。
歩くと汗がふき出すのに、上着を脱いでると冷えてくる。
のどがいがいがしたのでコンビニでのど飴を買おうとして
まちがってガムを買ってしまっていたことをあとで知った。
どちらでも大差ないと思ったけれど、ガムを食べるのは
久しぶりすぎて、ほっぺたのうちがわまで一緒に噛んで、
気づいたときはすでに遅く、一瞬遅れて痛みが走った。
ぐきっという音が聞こえた気がするのは幻聴なのかな。
舌で触ってみたら奥歯の歯形が分かるくらい深かった。


ガムに殺意を抱いて残りのガムを全部投げ捨てよう
かと思ったけど、ガムに罪はないのでやめといた。


ずっと前のワークショップに歯医者さんがいて、
口の中の体性感覚地図をfMRIで調べてる人がいた。
そういえば、ペンフィールドホムンクルス
口と舌がでかいけど口の中はどう表象されてたっけ。
顔の表面のほっぺたと、その裏側にある内ほほは
別々の場所で表現されているはずだろうなあ。
そうしたら、口の中とか鼻の中とか耳の中とか
ぜんぶ引き出されて、伸ばされたり縮められたり
どんなマップになってるのか想像できなくなった。
というより、つなぎ目がどうなっているか謎だ。


新宿で乗り換えようとしたら線がありすぎて
どれに乗ればいいのか全然分からなくなった。
各停なら確実だと思ったのにホームが見つからない。
とにかくどれかに乗ってみようと快速に乗ったら
土日は停まらないと言うので、中野で降りた。
今度は、地下鉄直通の各停とふつうの各停があって
すぐに来たのは前者だったけれど不安になったので
後者の次の電車を待ったけれど、今にして思えば、
どちらでも同じでよかったような気もしてくる。
こんなに迷うなら代々木で乗り換えればよかった。
新宿駅や東京駅の乗り換えは鬼門だったと肝に銘ず。


電車の乗り換えでだいぶ時間をロスした気がして
焦っていたりもして、駅からの道でもまた迷った。
商店街を通り抜けて行こうとしたのが結果的に失敗で、
いろいろなものに目を取られすぎてランドマークを
見落としてしまったらしく、いつまで経っても
左に進む道が出て来ないなあと思っているうちに
青梅街道まで出てしまった。地図で見ると相当遠い。
ここまで来る前に引き返せば良かったと後悔しつつ、
商店街はやめて大通りを戻ったら目印がすぐ見つかり
曲がるべき角がはっきり分かったので進んだらあった。


芸大の後の上野で出会った大槻さんの展覧会。
このお寿司によく入ってる緑色のぎざぎざの、
なんていう名前でしたっけといような話をした。
バランだったと思いますとすぐに教えてくださった。
漢字で書けたはずだとも。全然、思い浮かばなかった。
版画で紙を摺るのを思い出したけど、それはバレン。


帰って調べたら、こういうことらしい。

寿司桶に入っている葉っぱを「バラン」または「ハラン」と言います。
「葉蘭」というユリ科の植物があります。古来から大きな楕円形の葉っぱを
食器としても用います。中国の原産で、元は「婆蘭」「馬蘭」と書いたようです。
同じようにお寿司に食器として用いる「笹の葉」をバラン、ハランと呼んだのです。
駅弁の鱒寿司など、笹の葉でくるんだものがありますね。 
寿司桶のお寿司の上に笹の葉を敷き詰めて配達するお店もあります。
笹の葉には殺菌作用があるからですね。 
この笹の葉を切り絵のように切り抜いて細工したものが、寿司桶に入っていますね。
これも食器としての名残で「バラン」「ハラン」と 呼んでいます。
普通は、小さい出刃包丁に手ぬぐいを巻いて、鉛筆のように持って切り抜きます。

お寿司の美味しい食べ方 その13回より)


両手で水をすくってる絵があって、水になにかあると
ずっと眺めていたら、女の子の顔がぼんやり映ってる。
よく見ないと分からないけれど、たしかにそこにある。
そういうのがいいな。あやうく通り過ぎそうなもの。


帰りに商店街を通り抜けたら、駅からすごく近くて
自分はいったいどんだけ遠くまで歩いて行ったのか
と頑固さに嫌気がさした。途中で戻ればよかったのに。


駅のホームに上がったら、「あ-1」というビルが見えた。
ほんとだ、展覧会を開くのにふさわしい場所だと思った。