探索に偏重するとまだ出て来ません

論文を渉猟しているとあっという間に時間が経つ。


日記書くよりも何か探してる方が楽しいという方向に傾くと
インプットばかりでアウトプットがおろそかになる。でも、
どうでもいいことでも書いておくと安心して忘れられるし、
書くためには編集作業が入るためか逆によく覚えたりする。


眺めた論文。

Body awareness: construct and self-report measures.
Mehling WE, Gopisetty V, Daubenmier J, Price CJ, Hecht FM, Stewart A.
PLoS ONE. 2009;4(5):e5614. (Full text


最近body系になぜか興味があるらしく、タイトルにひっかかった。
こんなにたくさんの指標があるのかーと感心する。メタ解析の鬼。
"Table 5. Dimensions of Body Awareness"がよくまとまってる。




Body awarenessとwellbeingの関係なんて考えたことがなかった。


というわけで、臨床での応用のためのものを考える論文なので、

Publications containing the terms "body image" and "self image"
were specifically excluded from the search as according to our
working definition these terms are distinct from our restricted
core-concept of body awareness.

がーん。一番知りたい部分は除外されていたのだった。残念。
Body imageの錯覚や実験方法を比較分析してるのかと期待してしまった。


次に見た論文。

Visually Driven Activation in Macaque Areas V2 and V3
without Input from the Primary Visual Cortex.
Schmid MC, Panagiotaropoulos T, Augath MA, Logothetis NK, Smirnakis SM.
PLoS ONE. 2009;4(5):e5527. (Full text


マカクのV1を壊してV2とV3の視覚刺激への応答の術後変化をfMRIで調べた。
そうすると、"extra-geniculo-striate pathways"の役割が分かる。
え、どの経路?と一瞬思ったけれど、→LGN→V1以外の経路というわけで、
たとえば、上丘を通って高次視覚野に入る経路なんかを指すというわけ。
盲視のモデルにもなるんじゃないかと言う。なるほどそりゃそうだ。
先行研究では、V1を冷やして抑制するとV2、V3の95%は発火しなくなった。
でも、長期に渡る影響はまだ研究されていなかったので今回やってみた。
損傷したV1から投射のある(V1-lesion projection zones, LPZ)V2、V3では、
術前の約20-30%の活動に落ち、術後1ヶ月から681日後まで変化しなかった。
しかし、retinotopy(網膜位相保存/網膜部位再現性)は保たれていた!


上丘経路について補足。上丘浅層には網膜神経節細胞の約10%から投射を受け、
高次視覚野(extrastriate cortex)の賦活を調節するのに重要である。
実際、同側の上丘を損傷するとV5/MTとSTPの活動が完全に消失する。
外側膝状体(LGN)と視床枕は共に上丘からの投射を受けretinotopyを持つ。
LGNはV2、V4、V5/MTに直接投射する。特にV2へはLGNの顆粒細胞層から。
それから、視床枕(pulvinar)の役割はまだ明らかになっていないが、
解剖学的にはV2, V3, V3A, V4 & V5/MTへの投射が確認され、
視床枕が視覚処理において重要な役割を担っている可能性がある。
V2の活動が視床枕からの入力によって調節されている証拠はあるが、
V1損傷におけるV2、V3の活動における視床枕の影響は分からない。


現状では、V1からの入力がない状況下でのV2、V3の活動は、
V1を迂回する

  1. 皮質下から直接のV2、V3への入力
  2. 皮質下から高次野を経由した間接的なV2、V3への入力

のどちらによるものなのかを区別できない。


2の例として、V5/MTの活動がLGNまたは視床枕を通じた
上丘からの入力によって調節され、それがV2やV3への
フィードバックループによって今回のような活動を作り得る。
また、LGNや視床枕からV4へフィードフォワードな投射があり、
かつV4からV2とV3にフィードバックな結合があっても可能。


盲視(blindsight)にこれらのV1迂回路が関係するはず。
でも経路が断定できたわけじゃない。それはまだ先かな。
というか、Fellman & Van Essenのダイアグラムを見ても
V1経路だけでうじょーっと配線がこんがらがってるから
どの経路?いやいろんな可能性があるとしか言えないのかも。
有名な図の元論文(Free full text)をはじめて見た。
地道な作業に忍耐を感じる。
(上丘経路についてもっと詳細はこちらもどうぞ。)


そういえば今回の論文、著者の中にNikos K. Logothetisがいる。
David A. Leopoldと共著の両眼視野闘争の論文がかなり有名。
大御所だと思ったんだけど、意外に若いみたい。
Leopoldはもっと若かった。あ、弟子なのか。
お、Logothetisの師匠の一人はErnst Poeppelだって。
そうか、そういう系統なのか。なるほど。
ということが分かったりするNeurotreeはなかなか楽しい。


勉強になったのか煙に巻かれただけなのかよくわからないけど
疲れたので今日のところはこんなところで勘弁して。ふ〜。