台形補正する余裕がなくてごめん

カレンダーにアラートが出ていたので何かある日だぞ
はて何だったっけ、そうか先輩のdefenseの日じゃないか。


これは早起きして応援に駆け付けねばと思ったので
ほとんど寝ないでそのまま出かけることにした。
いや、2、3時間は寝た。これは寝てない部類に入る。


途中で差し入れのチョコレート(新発売!)を買って
この時間なら間に合うだろうと思っていたのに
こういう日に限って電車が遅延していて大変弱る。


せっかく急行に乗ったのに途中で下ろされて
次の次の各停をご利用くださいと放送が入る。
はい?次の次ってどういうことよ。
次の電車も当駅止まりになりますだって?
急行に乗り換える前の電車よりもさらに
後の電車に乗せられたことになるのかな。
すごく騙されたような気分だ。


出鼻はくじかれたけれど余裕を見て
早めに出ていたのでだいぶ早めに到着。
研究室(11F)に入ったら先輩が印刷中。
資料を整えたりするのをすこしだけ手伝う。
そうこうしているうちに時間になる。


中に入れないのは知っていたけれど
きっと着いて行くと何かあるかもと思い
一緒に発表の部屋(2F)まで降りて行った。


部屋は鍵がかかっていてまだ入れなかった。
その会議室の担当者が審査員のお一人
であるとその扉に書かれていたので、
たぶん鍵を持って来てくれるんだよね
と楽観して待っていたら時間ちょうどに
やってきたその先生は手ぶらだった。
鍵は君が自分で事務室に取りに行くのだよ、
と嫌みな口調で言うので内心憤慨する。


二人で走って上の階の事務室(7F)を目指して
先輩が鍵を受け取る間、エレベーターを
開けたままで確保して待っておく。
ここのエレベーターはなかなか来ない。
走って部屋(2F)に戻って鍵を開けて、
急いでプロジェクターを探したらなかった。


ことごとく、ついてないなあ。
じゃあプロジェクターを取りに行って来ます、
と走って研究室のとなりの部屋(11F)に
軽量なプロジェクターをお借りしに行く。
姿の見えない助教さんに声を掛けて拝借。
下に戻ろうとしたらエレベーターが
行ってしまったところらしく全然来ない。
その前後に先輩からケータイに電話が
あったらしいことを後で知った。
急ぎたいけれど走って階段を下りるよりは
エレベーターを待つ方が早いので諦める。


やっと来たエレベーターの中で
電源コードとPCにつなぐコードが
絡まっているのをほぐしてそれぞれ
所定の場所に差し込んで準備する。
部屋に駆け込んだら急いで電源を入れて
明かりが入るのを確かめて焦点を合わす。


この発表は非公開だから、云々と
また嫌みなことを言われる前に、
準備ができたら急いで部屋を辞去した。


台形補正する余裕がなくてごめんなさい。


とりあえず自分に手伝えることはもうないので
居室に戻ってうまく行くようお祈りでもする。
走り回ったせいもあるけれど、緊張したせいで
心拍数が上がってて汗も噴き出していた。
でも発表する先輩の方が大舞台でもっと
緊張してたんじゃないかと想像するけれど
見た目はいつも通りクールでかっこよかった。


審査が終わる頃にまた下に降りて外で待つ。
発表は問題なくうまく行ったらしい。
博士誕生の瞬間の感動場面に立ち会う。
スクリーンの前で記念撮影をする。
僕も握手してもらう。手が温かかった。
よかったですね。おめでとうございます。


片付けを一緒にして、撤収に取りかかる。
この鈴はどこから持ってきたのだろうね?
と聞かれるので、この部屋にもともと
備え付けなんでしょうかねと答える。
そしたら、そうかと言って棚に仕舞おうとして、
横に置いてあった何かのカップを上にかぶせて
こうやってフタをするんだねとおどけていた。


鈴の上のカップは大きさも形もフィットせず、
半分以上はみ出してて変なオブジェになった。


ボスは次のお仕事で急いでいらしたので
二人だけで天ぷらとお茶で打ち上げした。
最近読んだ論文の話で盛り上がった。
発表が終わってようやく肩の荷も降りて、
先輩はいつものよくしゃべるキャラに戻って、
笑顔が絶えない。実に微笑ましかった。
そして何より、天ぷらが美味しかった。