発音記号のためにTeXと格闘
昨日話題になったsupremumの発音記号を辞書で引いたので
ここに載せようとしたら、いきなり行き詰まって逡巡した。
いわゆる発音記号とは、国際音声記号(IPA: International Phonetic Alphabet)
が正式名称で、どんな言語のどんな発音も表記できると言う。
でもどうやったら「ここ」にそれが書けるのかわからん。
TeXにはTIPAというフォントがあるらしいんだけれど、
それはともかく、自分でがんばって作ることにした。
むかし、「ならば」記号とかを自作したのを思い出して。
まず、eをひっくり返したのを出せねばなるまい。
それには\rotatebox{degree}{}を使う。ちゃんと用意されてたぞ。
次、iの上にアクセント記号(フランス語で言うアクサンテギュ)
を付けたいのだけれど、ふつうに\acute{i}とするとなんと、
点が二つになってしまって 、こうじゃないんだ。
iの上の点はなくしたい。悩んだ。そうだ、ギリシア語のイオタ
で代用することを思いつく。ほらどうだ。。一応それらしく。
そして長く延ばすコロンみたいだけど、三角形二つが合わさったの。
ここが最難関だった。黒く塗りつぶされた三角形は新しい記号で
パッケージを使わないと厳しそう。断念して白抜きの三角で代用。
それから、記号を新しく作るために上下に重ねるためには
いろいろあるけれど、とりあえず、\stackrel{上}{下}で。
ただし、上の方が勝手に文字が小さくなるので調節する。
横向きの三角をさっきの回転と合わせ技。
白抜きなのは妥協だけれど、こんな感じに作れた。
最後に、数式環境のためかイタリックになってしまうので、
\rm{}を全体につけてローマ字にしたいのだけれど、
そしたら、回転したΣの変なのが付いたので変だった。
部分的に\rm{}をつけたら消えたので何だったんだろう。
というわけで、supremumの発音は、
のどれかになるらしい。eのところで延ばすのか。
そう言われてみれば、数学科の数学の先生は
サプリマムとかスープとか言ってた気がする。
でもあんまりeで延ばしてた記憶はないけれど。
TeXソースはこんな感じ
- \rm{s\rotatebox{180}{e}pr\acute{\iota}}\stackrel{\rotatebox{90}{\triangleleft}}{\rotatebox{90}{\small{\triangleright}}}\rm{m\rotatebox{180}{e}m}
- \rm{s(j)upr\acute{\iota}}\stackrel{\rotatebox{90}{\triangleleft}}{\rotatebox{90}{\small{\triangleright}}}\rm{m\rotatebox{180}{e}m}
むだに苦労の跡がにじみ出る。
でも今、もっと簡単な書き方に気付いた。
延ばす記号はひとつずつ回転して積み上げてたけれど、
素直に横に並べたのを一緒に回転すればいいだけじゃん。
こうすれば、上下のバランスも一番きれいだし簡単に書ける。
- \rm{s\rotatebox{180}{e}pr\acute{\iota}\rotatebox{90}{\triangleright\triangleleft}m\rotatebox{180}{e}m}
- \rm{s(j)upr\acute{\iota}\rotatebox{90}{\triangleright\triangleleft}m\rotatebox{180}{e}m}
うーんしかし、今度は文字の位置がずれたので直したい。
でももういいや。やっぱり最初に作った方が愛着もある。
あと、アクセントを付けるときはiやjの点が邪魔なので、
\imath や\jmath を使うらしいと知る。そうだよね。
ちなみに、反対の意味の下限infimumは
- \rm{{\footnotesize{I}}nf\acute{a}{\footnotesize{I}}m\rotatebox{180}{e}m}
- \rm{{\footnotesize{I}}nf\acute{\imath}}\stackrel{\rotatebox{90}{\triangleleft}}{\rotatebox{90}{\small{\triangleright}}}\rm{m\rotatebox{180}{e}m}
\footnotesize{I}がちょっと凝ったところ。
ところで、これらの発音記号には名前が付いている。
英語とかドイツ語のアクセントのない音節によくでてくる
「あいまい母音」とか、フランス語の「e」の発音をあらわす
[ə]は「schwa[ʃwɑː/シュワー]」っていう。
これはヘブライ語の「שוא〔šəwā〕[シェワー]」で、
文字をとったわけじゃないんだけど、この手の音をあらわす
母音記号がヘブライ語にあって、その名まえをつかってる。
発音記号の名まえ おもしろい。
ユニコードとかで実は発音記号出せたんじゃないか
っていう気もだんだんしてきたところだけれど。
全然関係ないけど、このグルムキー文字というのが
何かで検索してたら引っかかって、これすごくない?
難しすぎなさそうでいて、とても奥が深そうな姿形。
こういう文字を操れる人って相当頭いいんじゃないのかな。
難しいという意味においてなら梵字とかもそうだけど、
まあでも漢字だって結構取っかかりは相当なものか。
そもそもこれらの文字を書くのが難しいということについて、
わざわざ身体性に厳しさを課しても、なぜ残ったんだろう。
唐突に思ったこと。そのせいで苦労したとしてもなお、
表意文字の文化に生まれたというのはひとつの僥倖だ。