右肩をすくめて狩人はなにを想う

雨が降り出す前に星が見えていた。
ことにオリオン座が目に飛び込む。


オリオン座の鼓の形の4すみの星は、
リゲル、ベテルギウス、ベラトリックス
と言うのだと小さい頃に父が教えてくれた。
和紙の材料はコウゾ、ミツマタ、ガンピ、
ステンレスはクロム、ニッケル、鉄だと
3つセットでよく唱えながら覚えた。


残りのひとつは、あれは小学生のときに
図画工作の時間に、コラージュの材料
としてカラフルなページをちぎって使った
のであの時期に購読していたことになる、
ナショナル・ジオグラフィックについていた
付録の星図に載っていたのを見て知った。
その星図は今も部屋の壁に貼ってある。
タイトルが"THE HEAVENS"となっていたので
一瞬、天国の地図かと思って面食らった。




4つの中で一番暗い鼓の左下の星κはSaiph。
この図で鼓の右上のγがBellatrixである。
ここで、星座内で(基本的に)明るい星の順に
ギリシア文字のα、β、γ、・・・を割り振る。
ベテルギウスがオリオン座α星、リゲルはβ。
(ただし、ほとんどの時間リゲルの方が明るい。)


サイフはオリオンの右足側であることに注意。
なぜなら、オリオンの顔と身体は、天球から
地球の方を向いているように描かれるから。
ちなみに、リゲルは"left foot"のことである。
すると、同じように類推するとサイフは
右足のことかと思いきや、そうではない。


サイフは"sword of the giant"で、また
ι:Hatsyaは"the bright one of the sword"
η:Algjebbahも"sword"を意味しており、
ηーιーκの3つのつながりでオリオンが
腰に差している剣に見立てている。


一方、鼓のくびれに仲良く並ぶ三つ星の
ζ:Alnitakは"the girdle"
ε:Alnilamは"string of pearls"
δ:Mintakaは'the belt'を指し、
ζーεーδの並びで腰帯を表している。


今度は、αに目を向けることにすると、
昨年、ベテルギウスに関する3つの論文、
(1), (2), (3)が次々出た。
この15年の間に15%も縮んだ(1)と報告されたり、
表面の形状を干渉計によって観測したところ、
凸凹を捉えることに成功した(3)と言う。




これがその"The Spotty Surface of Betelgeuse"。
東京から大阪にあるソフトボールを見たときと
同じように普通は点にしか見えないものを
複数の望遠鏡を干渉させて解像度を上げた。
(大阪のソフトボールの縫い目が見える。)


急激に縮んだり、表面がぼこぼこで不均一なのは
超新星爆発の前兆を見ているのかもしれない。
ベテルギウス850万歳にして赤色超巨星墜つか。
すぐ明日、爆発してもおかしくないのだと言う。
もしこの近さ(640光年)で超新星爆発すれば、
昼間でも満月の明るさで輝くと予想される。


白昼の青い空に超新星が見えるとしたら、
きっとそれは強くて美しいんだろう。
夜になればその光は一段とまばゆく。